別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

文芸誌を一年間読んでみるチャレンジ 5月の定例報告会

「文芸誌を一年間読んでみるチャレンジ」もついに五ヶ月目。長々とやっているとどうしても予定が合わなかったりするもので、今回の報告会は二人でじっくり話し合う会でした!

エキセントリックなチャレンジについてはこちら
himasogai.hateblo.jp

S-Fマガジン・Lさん

  • 最近読むペースが落ちてきてしまった
  • 興味に合う特集のない号を読むのがけっこう大変
  • ハワード・ウォルドロップ『みっともないニワトリ』は鳥類学者がドードーを探しにゆく話。アメリカの地理が分からないので位置関係が分かりづらかった
  • テリー・ウィルスンの『ビリーとアリ』は、ビリーがアリを殺すたびにアリがどんどん大きくなってゆき……という話。子どもへの教訓のようでもある話だった。ビリーのシリーズがたくさんあるらしい
  • 同じく『熊が火を発見する』は、人間と熊との交流を描いているけれど、日本で熊というと被害のイメージしかないから感覚が違うなと思った(最後は……だけど)
  • 宇多田ヒカル×小川哲の対談は、天才同士の会話という感じだった
  • 宇多田さんのPVはSFっぽい要素もけっこうあるし、お好きなのかしら
  • 自分で作詞もされているから、言葉への造詣が深いのだろう
  • 『三体』をネタバレされすぎて、原作はもう読まなくてもいい気がしてきた

群像(一部)/言葉の繭/文學界・私

  • 群像はルシア・ベルリンだけ読んだ。今年新たな作品集が出版されるらしくて、そこに収録予定の3作が群像に載っている
  • ルシア・ベルリンの作品は自伝的小説で、以前の作品集とも人物や世界観が繋がっているのだけれど、かなり前に読んだので忘れてしまっていた
  • どの話もそれぞれの痛みのようなものを抱えているけれど、『オルゴールつき化粧ボックス』は子ども時代の冒険っぽくて読後感も好き
  • その次の大阿久さんのエッセイ『イボが治らへん』が軽い感じで、構成が良い(イボは治ったらしい)
  • 『言葉の繭』は桜美林大学のゼミか何かで作成している文芸誌で、なんと無料!(カラーもあり、紙もしっかりしてるのに)
  • 半分ぐらいが夏葉社特集ですごい
  • 島田さんの自作小説『大学生』も載っている。モラトリアム感が良い
  • 起業するまでの100冊、だんだんマンガから文学に入っていく感じがリアルで面白い。自分はこの1/3ぐらいのところにいるだろうか……(純粋理性批判とか、一生読める気がしないけど)
  • 年表もめっちゃ細かくて、生まれた病院の名前とかまで載ってる
  • 文學界』は新人賞発表号。いつもより分厚いし、100円高かった
  • 今回は新人賞が二作。どちらも性を取り上げた話で、『私は無人島』は友人の中絶のために伝説の堕胎師「えじう」を探しにいくストーリー
  • 二つの島で老婆から聞いた民話、謎多い人物「蛇人」と象徴的なデスクトップパソコンのイメージ、有害な男性を遠のける「ミレイジャク」という花……などファンタジー的要素が多かった。そこで選評も分かれたようで、阿部和重さんがその方法の弱点を突いていた
  • もう一方の『日曜日(付随する19枚のパルプ)』はゲイカップルがウザ絡みしてくる女の子を跳ね除ける話。パルプフィクションの手法に影響を受けているらしく、19の章が時系列を組み替えて配置されている
  • 女の子がモンスターすぎる、という話は選評でもSNSでも書かれていたけれど、そこに対する作者の応答が文フリで配布された冊子に書かれていた
  • 新人賞のお二人、10年以上作品を作り続けた方と初めての小説で受賞した方という対照的な方らしい
  • 旗原さんは作品も多いので、単行本化も近々されるのではないか
  • 市川沙央さん『オフィーリア23号』は、教養不足のため全然読めていない……。三島由紀夫の『憂国』を実写化するという話と、ヴァイニンガーを現代に甦らせるという話が軸に進んでいる。文字通り読むと現代的な価値観の逆張りのようにも思えるけれど、逆張りせざるを得ない主人公の環境の方を問題として描いているのだとは思う
  • 5月号は「心霊現象」特集(なぜ夏じゃなくて今?)。仲良し作家四人の「こっくりさんをやってみた」に癒された
  • 高瀬隼子さんと大森時生さんの対談、これを文學界でやるのか!というびっくり。Webで読めるので読んでみてください

books.bunshun.jp

  • 世の中が本物や本音志向になってる話はすごく分かる気がする。エッセイとかが流行ってる裏にもそういうのがあるんじゃないか。
  • 心霊現象エッセイはホラーというよりスピリチュアル寄りな話が多かった
  • 身体系のリレーエッセイは最近単行本化されていた

  • 円城塔さんの『コロニーに暮らす』はエッセイと小説の中間みたい
  • 青野暦さんの『草雲雀日記抄』も自分にはちょっと難しく。主人公と亡くなった父親との視点の境目が曖昧になっている
  • やっぱり純文学って難しいなぁと思った5月号だった

次回報告会について

6月は文チャレ開始から半年になりますので、上半期の振り返りについても話したいと思います。おそらくZOOM開催。