別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

読書日記一年分予定(10/52)

投稿を忘れがちな読書日記も10週目。
今週はずっと体調を崩していた。

前回
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12/3

昨夜から全然眠たくならなくて困った。さすがに昨日の午前飲んだコーヒーのせいということもないだろうから、運動不足か体調か。時々断片的な夢を見つつ、どんどん喉の調子が悪くなるのを感じていた。朝にはバリバリ痛くなってた。
夢も夢で、玉突き事故の後尾に追突してしまい、しかも死人が出るという最悪なものを見させられた。コンディション最悪である。

今月も『文學界』を読み始める。文チャレ最後の一冊だ。
辻原登『鋸山奇譚』はとある事件に関する関係者の証言で構成された短編。最初は1969年に千葉で起きた女子高生の失踪から始まるのだが、その裏事情が明かされると同時に話は別の事件へと繋がっていく。実際に起きた事件から着想を得たという注釈がついているが、世代的に知らないのでどの辺なのかはわからない。
ミステリーではなかった。

続いて沼田真佑『白き死者』。仕事で嫌々東京出張に来た主人公が博多へ帰る機内で回想をしている。仕事終わりに久々に会った姉の人間性がものすごく丸くなっていて、意外に思いつつもその変化を喜んでいたのだが、一晩寝て起きるとものすごい荒んでいた。自分と同じ名をつけて可愛がっていた猫を棄てるというのでやむなく引き取った主人公は博多へ帰るのだった。
めちゃくちゃ世にも奇妙な物語じゃないか。しかも引き取った猫にボールペンを投げてやったら「イレカワリ」「ナリスマシ」などと読めなくもない字を書くという展開つき。世にも奇妙な(略)
でもこれ姉が猫に乗っ取られたというより、今まで乗っ取られていたのが戻ったと読めなくもないんだよな。回想から見える人物像的には。つまり天使だったネコちゃんが姉のもとを離れて主人公のもとにやってくるというハッピーエンド……ということにしておきたい。


その次が王谷晶『かう人』なのは確信的だ。原稿の上がった順とかじゃなくて、ある程度方向性を持たせて掲載作を選んでいるんだろうか。
主人公は大食いフェチの女性。いつも大食い動画を見ながらご飯を食べている。ある日隣室に越してきたいぬかいさんはペットを飼っていたが、どう見ても人間である。フクというそのペットは、レスラーのような体格に白いTシャツとパンツを着ていた。主人公はは次第に「フクがたくさん食べるところを見たい」という欲求に抗えなくなり……。
これも奇妙な物語だ。


12/4

耳鼻科へ行って喉が腫れてると言ったら、「腫れてるように感じるだけだから大丈夫」って、いや大丈夫じゃないから耳鼻科来てるんだが……。
診察や処方の待ち時間に文學界から旗原理沙子『犯罪者と私』を読む。新人賞の『私は無人島』がすごく良かったので期待している作家だ。
今作は夫からDV被害を受けている女性が主人公。身体的な暴行もあるのだが、それよりも精神的DVと自己批判を内面化してしまう主人公の関係が読んでいてものすごくしんどい。それに加えて職場でのモラハラパワハラや性被害などさまざまなダメージが主人公を襲う。つらい。
個人的に感情移入が高まってしまうのは、結婚式場での映像編集という主人公の仕事と近からず遠からずの業界で働いたことがあるからか。側から見るとキラキラしてそうで……というあれ。

紅葉の隠れ名所的スポットへ行ったらピークで真っ赤だった。屋台があり提灯が飾られ人がめっちゃいた。全然隠れてなかった。

午後はひたすらZINEの編集作業をする。色々ギリギリすぎて胃がキリキリ。なんでいつもこうなっちゃうのか。


12/5

昨晩、今朝と耳鼻科の薬を飲んでいるけどまだ喉はチクチクだし鼻水も咳もひどい。こんな状態でバイトに行くのは本当に嫌なんだが、休んでも誰もカバーしてくれないし、後で自分の仕事が余計に大変になるだけなので行く。つらい。
そして今日は通勤読書用の本を持ってくるのを忘れてしまった。逃避先がない。困った。

一日をなんとか耐え、夜は知人と一緒にZINEの校正をする。何度読み返しても誤植出てくる。自分は割と本を読んでて誤字に気づくタイプだけれど、自分が作っているものにはめちゃくちゃ慢心してしまうので見落としがち。知人のおかげで数ヶ所拾い、なんとかデータが完成したと思って入稿用にアウトライン化してPDF化した後でまた見つけて泣きたくなった。
そうやって何度も何度も読んでなんとか入稿した午前一時。これでひとまず解放された(フラグ)


12/6

3ヶ月に一度ぐらいある携帯不携帯をやった。朝食を食べて準備して家を出る前にもう一度ぼーっとスマホ見ちゃって、そのままベッドの上とかに置いていっちゃう。しかも時間もギリギリになる。夜更かしした日は特に朝の判断力が致命的に欠陥してしまうので、やらかしがち。
で、携帯を置いていったせいでメールに気づかず、帰ってきてから昨日の代金振り込みをしていないことが発覚。締切はとっくに過ぎてしまっている。今までに外注するときは大体クレジットで入稿時に支払ってたから完全に失念していた。やっぱ夜中にやっちゃダメだわ。

行きは眠すぎて本を読むどころじゃなくて、帰りにようやく万城目学『八月の御所グラウンド』を開く。こないだ講演を聞いたばかりなので、「ああ、これがあの話のあれか〜」と思いつつ読んだ。八月って真逆だし季節外れかと思いきや、二作収録で一作目が『十二月の都大路上下ル』なのでタイムリーだった。こちらは主人公も女子高生で割としっとりした優しい話だなーと思ったが、表題作の方は京都の冴えない大学生が主人公で謎に安心した。


12/7

もっと寝ていたいよぅ……と布団にしがみついていたが仕事なのでしぶしぶ起きて、家を出る。冬の朝、原付を東に走らせるのはとにかく眩しいのでダイソーのサングラスをかけたらとっても目に優しい感じがする。ただ影のところが見にくいのが怖い。やはりサンバイザー的なものが一番良いのだろうなぁ。あるいは明るさを自動調節してくれるサングラス。あるのか?

『八月の御所グラウンド』を読み進める。主人公が御所にグラウンドがあることにびっくりしたという過去が描かれていて、講演でもそんな話をされてたなぁと思い出す。特に皇居がある東京の人は驚くらしい。
京都御所は何度か通り抜けたのとツアーに参加したことが一回だけあるけど、グラウンドは見たことがない。そんな広いのか。

お昼、駅でやってた鉄道忘れ物市を見に行ったら傘とマフラーが大量に売ってて、二ヶ月前ぐらいに折り畳み傘を買ったことを若干後悔した。後悔しつつ、200円なので買った。そしていつかこれを電車に忘れて、「安かったしいいか」とそのままにして、結局また忘れ物市で再会する……みたいな未来図がありありと浮かぶ。でも絶対そうやって回り続けてる歴戦の忘れ物も一つや二つあると思う。それだけで連作短編集になりそう。
なお65W充電器と一脚がそれぞれ500円という信じられない価格だったのでもちろん買った。一瞬持ち主に申し訳なさを感じないでもなかったが、そもそも売ってるのは鉄道会社だし、忘れ物市に出される程度の期間持ち主が名乗り出なかったのだから、これはありがたくいただいておくことにする。

帰りの電車と寝る前で『御所グラウンド』を読了。トークでは学徒出陣や戦争の話にあまり触れていなかったので、そこを掘り下げる話だったんだ!と思った。八月半ばの早朝に行われる試合、そして五山送り火という舞台設定が絶妙で、最後はしんみりしつつも朗らかでよかった。ドラマチックすぎず、淡々ともしすぎず。


12/8

三度寝ぐらいして11時に起きる。ちょっとぼんやりしたと思っていたはずが余裕で1時間とか経っていて、巨大動物の時間感覚はこんな感じなのかなぁと想像する。

5日経っても喉の痛みは治らず、ずっと咳が出ている。水鼻は出なくなってきたのだが、代わりに乾燥して鼻腔を塞ぎ、息が苦しい。風邪やインフルの時にもこういう感覚があるので、実に病を患っているという感じがする。
咳が止まらず本気で息が苦しいコロナの時に比べらばまだマシだが。

行く予定だったイベントは直前まで迷ったが、周囲に迷惑をかけるものなんなのでキャンセルする。代わりに来週いりそうなものなどを買いに出かけたのだが、どこもかしこもめちゃくちゃ混んでいて辟易。スーパーもいつもより子連れファミリーが多い。そういう時期なのだろう。
そして今日はものすごく寒かった。今にも雪が降りそうなグレーの雲が浮かんでいる。出勤日じゃなくて本当によかった。

帰ってきて、今週は掃除や片付けをする気力もなく、買ってきたものをその辺に放り投げといて文學界の続きを読む。
旗原理沙子『犯罪者と私』が途中で止まっていたので最後まで。Yという医師の男が前作のやべー男よりもさらにやばい、というかこいつが犯罪者ということになるのだけれど(夫もモラハラがひどいのだが)、主人公は自分にも非があるとずっと感じていて、なかなか被害を周囲に伝えられない。ここがものすごくリアルだと感じる。
誰もが誰も被害を告発したり助けを求められるわけじゃない。主人公は「自分も相手を支配していたのではないか」というようなことを考えるわけだけど、周りから見たらどう考えても暴力を振るう方が悪いわけで、読んでてもどかしくなる。でも実際、加害側の理論を内面化してしまう被害者って多いのだろうなあと想像する。
エンパワメントというのはこういうことかもしれないな、と思う。

岩城けい『フェアリー・ブレッド』は離婚を経験したフィルと未婚だったリンデルが出会い娘が生まれる、というところから始まる。おそらくアメリカが舞台だと思うが、文學界でこういう作品を読むのは新鮮だ。


12/10

喉、よくなったかなと思ったけどダメだ。そして相変わらず睡眠が浅い。今週ずっと地味にHPを削られ続けているような気がする。もうこのままダウンしてしまおうか。なんて思いつつもバイト先へと揺られていく。

『フェアリー・ブレッド』というタイトルを最初見たときブレッドをブラッドに勘違いして、どす黒いものを想像してしまったのだが、あながち間違いでもなかった……。
フィルとリンデルは出会った時点で40代ぐらいなので、契約書を交わして金銭面の分担を決めたりとかなり大人なお付き合いだったのが、娘が生まれたり生活が変化するにつれてなあなあになってしまって、結局負担が大きくなったリンデルはアルコールに飲まれてゆき、とだいぶ雲行きが怪しくなっていく。
娘の(ザ・アメリカンな感じの)誕生日パーティーでは束の間の幸せが訪れようとしていたのだが、最後は恐ろしく悲しい結末が待っているのだった。
人と人が共に生きることの難しさを感じる作品だった。

二〇二四年下半期同人雑誌優秀作としてあまざき葉『掌編小説集 ゆれあうからだ』が掲載されていた。他者あるいは自分自身とのすれ違いが身体のパーツとして極端に顕現してくる、みたいなショートストーリーが5篇。個人的にはマグリットの絵画を連想するような作品たちだった。