別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

251206鑑賞記(映画『ジュンについて』と矢野顕子「さとがえるコンサート」2025)

岐阜は可児市で上映された『ジュンについて』を観に行く。夏葉社・島田潤一郎さんのドキュメンタリー。撮影が2021年ごろからで、自分が夏葉社を知ったのもその頃だったなぁと思った。参加した2022年のトークショーでもカメラが回っていたようで、知り合いがちょくちょく映ってて面白かった。(自分は最前列で聞いてたので写ってなかった)

9minpic.com


島田さんのお仕事に密着しているのでさまざまな本屋さんも登場していて、書店営業ってこんな感じなんだなぁーというのが見れて貴重。本とか音楽の話で盛り上がっていて、やっぱり本屋をやるにも出版社をやるにもカルチャー的知識が必要そうだ。そのなかでもさすがの善行さんの貫禄。ちょうど『長い読書』の執筆をされていた時期で、善行さんが助言している貴重な場面も映っていた。
撮影当時に進行していた『本屋で待つ』の制作は映像も多く、元になったインタビューと思われる映像だったり、本に出てくるウィー東城店スタッフの方々が自ら語られている場面はなんだか嬉しくなる。本を読んでる人にはご褒美みたいな。帯の文言を決める際、「奇跡」という言葉を使うか使わないかで佐藤さんと島田さんの意見の違いがあったらしく、その辺りはやっぱり自分でやってきた人とそれを外側から見る人との違いなのかなぁと思った。
島田さんのご家族も登場していて、お子さんたちがユニゾンで絵本を読んでいるシーンはちょっと泣きそうになった。なんかこう、生活があるってすごくいいよな、と。帰省の場面でも思った。

自分も本を読んでウィー東城店を訪れたことがある。

最後の場面は、コミュニケーションの苦手な人、優しくなれないような人にも居場所がある世の中であってほしいという祈りのような言葉。人柄だなぁと思う。

上映後のトークショーでは本づくりについて、短くたくさん売るためには大きな力を借りなければならない(ので色々と制約がある)が、時間をかけて長くやるならばより自由にできる…という示唆的な話もされていた。何らかの形で本に関わる仕事がしたいという青年からの質問には、若い頃はたくさん選択肢があるように見えるが、実は一人一人に本当に向いてること、できることはあんまり多くない…と返されていた。あと、本屋は意外とミーハーな方が向いてるという話も。たとえ扱うものが古典作品ばかりであっても、その並びが時代を照射するようなものでないとね、というようなことを話されていた。お知り合いには毎週週刊文春をチェックしている本屋さんもいるとか。
ついでにこれは映画中だったかトークショーだったか忘れちゃったけど、今の時代「このレベルまでは頑張って来てね。そしたら助けてあげるから」みたいなのが多い、というようなことを話されていて、それはすごい分かるな〜と思った。一定の基準以下のものは見てさえもらえないみたいな。これも結局「ここまで来れないのは努力が足りてないから」っていう自己責任論だろう。世知辛い。

情報を全く調べずに見たので、監督の田野さんが50代と聞いてびっくりした。なんとなく若い人が撮りそうな題材だと思っていたので。でも映画を観た後では、あの安定感はベテランじゃないと出せないなとも思った。

あと、島田さんが習慣にされている「食後に30分、ちょっと難しめの本を読む」というのがすごくいい。やりたい。*1



終わったあとに本屋さん巡りをしつつ帰る予定だったのだが、まさかの同じ会場で「矢野顕子さとがえるコンサート2025 featuring 小原礼佐橋佳幸林立夫〜30th Anniversary〜」が今夜あるということで、当日券を買って飛び込んだ。(島田さんがトークショーでもちょっと触れてたし。一つの作品を長く届け続けることの凄さを語っていた)
普段なかなか県外のライブに足を運ぼうってなんないので、こういう機会は貴重。見られるうちに見とかないとね、というのもある。できれば上原ひろみとのライブも観たいけど。
ホールに入るとyanokamiが流れていて、チルい。ステージ上では上手からグランドピアノ、ベース、ドラム、ギターの順。薄ぼんやりとしたライトの元に浮かび上がる楽器の姿が、ライブ開始前特有の高揚を感じさせてくれる。
客層の平均年齢は50以上ぐらいな気がした。

開演までの待ち時間で30分ぐらいあったので、持ってきていたジェニファー・アッカーマン『フクロウ 地球上で最も謎めいた鳥の科学』(鍛原多恵子訳,樋口亜紀日本語版監修/日経ナショナルジオグラフィック)を読み始める。これは図書館の新入荷コーナーで見つけた本。確かにフクロウって知らないよなぁと思ったのと、前に鳥展を見たのもあって借りた。
海外の科学本にありがちな「研究者の〇〇は〜という発見をし」みたいなのが羅列されていく読みにくさはあり、次々とフクロウの名前が出てきてもなかなか頭に入ってこないのだが、DNA周りの技術向上で類縁関係が見直されたというのは鳥展で見たやつだなぁと思った。猛禽や夜行性鳥類の仲間と思われていたが、実は昼行性の鳥類から分岐したらしい。


18時、開演。エレガントな紫色の衣装を着た矢野さんがピアノ前に座り、ドラムのカウントからさっそく始まったのが「春咲小紅」。飛ばしていってる。
「SUPER FOLK SONG RETURNED」前のMCで、もう歳だから滑舌が…みたいなことを仰っていたが、もちろんそんなことは全然ない。あらゆるヴォーカリストのなかでいちばん何を言ってるかが聴きやすいのではないかと個人的に思っている。自分は曲重視タイプなので声を楽器と認識しちゃうと歌詞が全然入ってこないんだが、矢野さんの歌はちゃんと歌として、詩が届くのだ。

近作の中では特に好きな「魚肉ソーセージと人」もやってくれて、“ひとりひとりは〜”のくだりを生で聴くのはもうグッときてしまった。この曲はペダルスティールも最高。その次の「ニットキャップマン」で空気がまた変わり、前半最後は大村憲司の「YUMEDONO」。立ちながらノリノリでウーリーを弾く矢野さん。かっこいいわ。ギターの佐橋佳幸さん*2もアコギ、エレキ、ウクレレ、スティール、マンドリン…とバリエーション豊かですごい。

魚肉ソーセージと人

魚肉ソーセージと人

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後半。黄色から紫のグラデーションのドレス(サツマイモみたい)に着替え、髪型もちょっと変わった? まずはソロで「WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN」を演奏。転がるような矢野節が聞けてとても良い。サスティンで鳴らす時、腕をバッと振り払うようにするのがかっこよく、こういうのは生で見てこそだよなと思った。一度キーボード側のマイクにぶつけちゃってて痛くなかったかな…なんて思ったけど。MCでアンソニー・ジャクソンの訃報を知る。
そしてアコースティックコーナー。矢野さんもギターを構え、ベース、ギター、ギター、バンジョーの編成でThe Byrds「Mr.Spaceman」。パートごとにそれぞれが日本語訳したというバージョン。
そしてそして、「音楽はおくりもの」。矢野さんはピアノを弾かずに立って歌っていたが、もう全身から音楽のエネルギーがほとばしっていた。歌声が力強すぎる。ソロはピアニカで吹かれていた。

youtu.be

何かすごく聞き覚えのあるベースラインが聞こえるとともに天井からミラーボールが降りてきて、これ「Mirror Balls」じゃない!!? と思った。合間に挟まれる歌詞は山下達郎の「PAPER DOLL」だったんだけど、アレンジがDCPRGすぎる。佐橋さんもギュンギュン弾いててかっこよかった。

最後は畳み掛けるように「クリームシチュー」「ひとつだけ」(自分はもうこの曲さえ聴けたら満足だと思っていたため、2025年もう終わりでええわと思った)など。アンコール前の曲だけ分からなかった*3んだけれど、力強いピアノとヴォーカルが神がかっており、凄かった。

アンコールはNHKコラボの「生き物たちへ」と、そして当然この曲はやる「ラーメン食べたい」。ラーメンは今回もだいぶトリッキーなリズム(ドラムがグリーンデイの「Wake Me Up〜」みたいなリズムで、裏手拍子をするとスネアの位置とズレる)をしており、観客も最初ちょっとノリづらそうだった。でも最終的にはめちゃくちゃ盛り上がってて、やはりこの曲をみんな求めてるんだなぁというのがよく分かった。


覚えている範囲での曲。
・春咲小紅
・夢のヒヨコ
・(?)
・SUPER FOLK SONG RETURNED
・魚肉ソーセージと僕
・YUMEDONO

・WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN
・Mr.Spaceman
・音楽はおくりもの
・PAPER DOLL
・Do you love me?(愛されたいおれら)
・クリームシチュー
・ひとつだけ
・(?)
・生き物たちへ
・ラーメン食べたい

プロのライブを久々に聴いたけど、バスドラめっちゃ大事やな、というのがよく分かった。

*1:映画中では『特性のない男』を読まれていた

*2:松たか子の夫である

*3:覚えている断片的な詞で調べると「Full Moon Tomorrow」かも?でも英語じゃなかったような気もする