
So This is X'mas〜
ということで、申し訳程度のクリスマス要素であるキャンベル・ツリーをご覧いただいたところで……ジョン・レノンからのビートルズ繋がりで「POP ART: THE FAB 4! (ポップアート:時代を変えた4人)」展の感想を。
ネットで見つかったものはリンクを貼りました。
「ポップアートは未来派やシュルレアリズムのような宣言なしで、イギリスおよびアメリカでそれぞれ誕生した」
(展示解説より)
むしろ宣言ある方が少ないのでは? などと思ったが、近代芸術はそういうものなのだろうか。
- ウォーホル「キャンベルスープ」
その複数性や手の跡を感じさせないクールな表現は、卑近な日常イメージの使用とも相まって、当時アメリカ美術として世界を席巻した抽象表現主義の崇高さやオリジナリティ、高尚さに代わるものとして迎えられた。
プログレに対するパンクみたいな感じだろうか。
- アンディーウォーホル作貯金箱(略)“豚の写真”みたいにキレイだろ?
Pretty as a pigture, huh?
というのが良い。
これは豚の写真を塗ってる?
作品のど真ん中に詩を入れるというスタイル。
読ませる作品が多いな
- リキテンスタイン「バーン!」
そのままのコピーかと思いきや、単純化されてたり色変わってたりと記号化されてるんだな。
隣に元ネタのスタースパングルド・ウォー・ストーリーズ#102も並べてくれてるのがありがたい。
第二章はベトナム戦争へのアンチテーゼ。“Make Love(&Music), not War”
- リキテンスタイン「アスペン・ウィンター・ジャズ」のかっこよさ。
ベースのネックとサックスを吹くタキシードの人物がかなり洗練されたデザインで配置されている。
上部のタイポもオシャレ。Sの置き方が天才すぎる
- ローゼンクイスト「アスペン・イースター・ジャズ」
単純なコラージュじゃなくて、スクリーンプリントによる網点とか単色カラー印刷の対比が独特なインパクトを出してる。
斜めの作品、壁に留めるのが大変そう(クロスに打ち込んである?)
https://walkerart.org/collections/artworks/aspen-easter-jazzwalkerart.org
バイオリンの後ろにあるやべー観覧車みたいなのが気になるけど…
コラージュのグリッドの雑さというか、いい感じにラフな配置は絶妙。デジタルでやるとなかなか出せない感じ。
- アンディウォーホル「9枚のレコード」
右下のラッツアンドスターがこの中にあるのが不思議すぎる
- ウォーホル「ビートルズ」
線画が絶妙に誰がだれかわかりにくい
たぶんジョージ、ポール、ジョン、リンゴだけど
60年台のビートルズ全盛期にはウォーホルは彼らのモチーフを用いなかったらしい。このパネルの文言だとなんか含みを感じてしまうが
一世を風靡した20代前半の若者4人の目覚ましい成功は、まだ人気に火のつく前のウォーの目にはどのように映っていたのだろうか。
https://www.nationalgalleries.org/art-and-artists/93255www.nationalgalleries.org
- ウォーホル「ザ・ローリング・ストーンズ」
やっぱこの写真に少しずらして線画重ねるみたいなのがかっこいいよな。今でもグリッチ的な感じでよく使われるだろう
- ロバート,インディアナ「LOVE」
塗り分けの仕方が独特。LとVの間の空間がさかさまのスペードみたい
Eの右側とかも普通のタイポだとここまで下がってこないし、余白のデザインをかなり意識しているだろう。
3章はポップアートとファッション。
資本的な記号を用いたアンチテーゼがまた資本に回収されているみたいな皮肉がありそう。
- ウォーホル「ザ・スーパー・ドレス」
もちろん「Souper」である。昨今の百均でよくある食品パッケージコラボデザインの先駆けとも言えるか…?
4章からは四人それぞれを個別にみていく構成。まずはリキテンスタイン。
「船上の少女」の解説で「ベンデイ・ドット」という語句が初めて出てきたが、網掛けドットのこと?
- 「スイート・ドリームス、ベイビー!」
完全に「当て身」。トートの柄とかにしたら人気そう。
- 「火ぶたを切りながら」
右にある元ネタの「オール・アメリカン・メン・オブ・ウォー#90」からコマの並びが変わっている。おそらく戦闘機の銃撃がだんだんクローズアップされてる場面だが、リキテンスタインは最もクローズアップされた銃口を中央に持ってきている。流れが切断されて、不思議な対称性が生まれてくる。鑑賞に耐えるものになっているかも。
- 「筆触」
ジャクソンポロックのオマージュかどうかは分からんけど、この線のスタイルで筆のストロークを再現するのはすごい。絶妙。
本来はコントロール不可なものが完全にデザインされて存在しているのが面白い。
- 「活動のマートン」
シルバーな紙にスクリーン印刷するの良すぎ
- 「牛 Ⅰ〜Ⅲ」
ピカソのオマージュ。Ⅲはもう完全にモンドリアン。
ただ元々牛の模様と空の図案が似てるのが若干ずるい
- 「ヌード」
ここにきてドットがグラデーションに。
第5章、ついにウォーホル。
- 「花」の説明
写真製版をもとにしたシルクスクリーンは、つくり手の手の跡を残さず制作できる版画技法だが、実際にはインクのシミや版の擦れなど微妙な差異を生み、細部までまったく同一のものを制作することはできない。だが、素早く大量に制作できるその技法は、「機械になりたい」と語ったウォーホルにとってふさわしいものだった
今生きていたら最新技術をバリバリ使ったのだろうなあ。
- 「マリリン」
今回は縦二列、五枚ずつの10展が展示されている。シンプルに見えるがよく見ると5色で塗り分けられている。
上段真ん中のパールブルーに山吹色の髪、紫の顔のやつがなんとなく一番記憶にある気がする。
下段右から二枚目のモノクロのやつとか、左端のシルバーにくすみトーンの中唇だけショッキングピンクなやつも良い。
マリリン・モンロー本人の生涯や、説明にあるマリリンの「最期」を知らない自分から見ると、あくまでデザイン的な実験というのを前面に感じる。美のイメージの記号化なんだなというのは分かるが(色分けされているのが「髪」「顔面」「アイライン」「唇」そしてマリリンのシンボル「ホクロ」…というのがつまり人の美的判断のポイントだろうか。ネガ的に反転したような色彩のものは「裏の顔」とも読める)、それをマリリン本人と結びつけた鑑賞というのは世代以降の人間にとっては難しいだろう。
6章はラウシェンバーグ。
- 「ダンテ『地獄篇』のためのドローイング」。ダンテ読んでないから何を表現してるのかは読み解けないが、ソルヴェント・トランスファー(溶液で印刷物を転写する)という技法を初めてみた。かなりぼんやりとしたコピーになっていて、一見すると色鉛筆の塗りにも見える。
www.rauschenbergfoundation.org
- 「シカゴ美術館」
ラウシェンバーグという人はかなり大胆なんだなと思う。
ユニフォーム(?)、オレンジ、何らかの風景などがザクザクっと切り貼りされ、その上に荒々しく「ART INSTITUTE CHICAGO RAUSCHENBERG DEC.3 1997 JAN 15」。
ユニフォームによるコラージュの形は手のひらか花のようにも見える。
www.metmuseum.org
https://www.artsy.net/artwork/robert-rauschenberg-one-lioner-9www.artsy.net
第7章はジャスパー・ジョーンズ。
つまり、世界のあらゆるものが標的になる資格をもつ。絵画が標的になったのか、標的が絵画になったのか、そのどちらでもあるとすへば、これは標的なのか絵画なのか、という問いに逆戻りする。
つまりどゆこと…?
- 「技術と創造力」は額の中に二つのものが入っている。左側には鉛筆の線画でターゲットが描かれ、その下には「TARGET 1970」「_ AND _」の印字。さらにその下には実物の赤、黄、青の絵の具と絵筆が置かれている。一方右半分には黄ばんだスポンジがあり、下の方にうっすらと三色の絵の具の跡が写っている。
おそらくこれはパッケージされたセットということで、スポンジは元々左側の上に被さっていたのだろう。
要は「塗ってくださいね」ということだ。署名の左側にはジャスパーがサインしているが、右側は空白である。ここに塗り手の名前が書かれて完成する作品なのかもしれない。
- 「デバイス」はかなり抽象的な作品。ムラのある黒で塗られた画面の上半分には白い半円が二つ。下半分は何もないがよく見るとDEVICEというレタリングが施されている。
半円の中には回転方向のような矢印と、何らかの文字が書かれている。wimp nutというのはかろうじて読める。
棒状の何かが円の上を回転している…?
ぱっと見ではテープレコーダーのようにも見える。
- 「無題」は2013年作のかなり新しい作品。
にじみを利用した描写が内蔵のようでややグロテスク。上部には0〜9までの数字、画面下半分には28のハンドサインが並んでいる。最初アルファベットかと思ったが多いしな。よく見ると同じパターンもあるので、文字列が表されている可能性はあるか。
そしてよく見ると数字の下のウニャウニャの部分はぼんやりとアメリカ大陸の形をしている気がする。
www.josephklevenefineartltd.com
8〜11章は「FAB4」と同時代的な4人、ロバート・インディアナ、ジェームズ・ローゼンクイスト、トム・ウェッセルマン、ジム・ダインを紹介している。
- ジム・ダイン「ドリアングレイの肖像」。ワイルド読んでないのでここの場面の意味は分からないんだけど、「ホース・ランプ」が絶妙に可愛らしくて好き。
- それと対照的に「ピノキオ」(2008)はだいぶホラー。
最後の最後にエキーボ・アブリルによる「FAB4」のWith The Beatlesパロディ絵画が飾られててよかった。
総括
ポップ・アートというと、美術の時間に読んでた図録の最後の方に載っていて、なんじゃこれと思っていた記憶がぼんやりある。もちろんなんじゃこれ具合ではシュルレアリスムの方が上なんだけれど、その頃はシュールなギャグとかにハマっていて、むしろシュルレアリスムの方が好きだったような気がする。
ポップ・アートはあくまで、なんか商品とかを描いてるコマーシャル的なもの……みたいな理解だった。(実際にはアンチ消費主義であるのだが)
今回の展示は巨匠四人みたいな感じだったけれど、ウォーホルとリキテンスタインは見たことある一方で、ラウシェンバーグとジャスパー・ジョーンズは全く知らない画家だった。もしかしたらどこかで見たことはあったのかもしれないが、でもまとまってみたのは絶対に初めてで、こうやって作家ごとにフォーカスしてくれるのはありがたいなと思った。
自分の中でも十数年前とは色々感性が変わっているようで、今回はラウシェンバーグのラフなかっこよさがめちゃくちゃ刺さった。これは本当に知れて良かったなぁと思う。
