別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

240407雑感

たまには予定がないダラダラするだけの休日が欲しいと言っているくせに、いざ休日になると、そわそわして全身全霊が不快になっていてもたってもいられなくなり、思わず家を飛び出してしまう。もうなんか病気じゃないかと思う。

家を出てしばらく行くと、桜並木が満開になっていた。
桜なんて別にいつでも見られるんだし人多いし、わざわざ見に行かなくてもいいかなぁと思っていたけれど、薄ピンクに染まっている川沿いを眺めると不思議と気持ちが落ち着いてくる。心の不快感がすうっと抜けていくような気がした。
このまま60km離れた古本屋まで行こうと思った。

自動車専用道を法定速度で走るトラックについていると、横からビュンビュン追い越されていく。晴れの休日、みんなはやくどこかへ行きたいのか、あるいは帰りたいのか。
自分も普段は移動なんて早い方がいいと思ってしまうタイプなのだけれど、ゆっくり移動することでしか得られないものがあるのではないか。例えば標識は法定速度で走った時に読みやすいことを想定して作られていると思うし、周りの景色や状況にも少し気を配る余裕が出てきたりする。そして何より、思索が捗る。

陳腐な表現だけれど、自分の心にはポッカリと穴が空いていると思う。
その穴を、人間関係とか情報とか色々なもので埋めようとするけれど、いつまで経っても穴は埋まらない。
それはきっと、自分自身でどうにかする寂しさなんだと思う。

目的の古本屋さんは、もしかしたら一年ぶりぐらいだったかもしれない。店内のレイアウトがガラッと変わっていて、模様替えがかなり大変だっただろうなあと思った。
古本屋さんのいいところは、某新古書店チェーンとは違って、独特の分類をされているお店が多いというところ。地元作家や店主のおすすめが固められていたり、なんとなく文化的な、でも硬くないエッセイ(赤瀬川原平とか、寺山修司とか……)のコーナーがあったりとか。こういう並べ方はブックオフではまず見ない。だからこそ古本屋でしか出会えない一冊というのがあると思うんだ。
ということで、悩める私に刺さりそうだった串田孫一さんの『生きる思索』などを買った。お名前は存じているが、著書を買ったのは初めて。教養文庫も初めて(バーコードがないのでブックオフには売っていないのだ)。

もちろん、わざわざこっちの方に来たんだから、近くのブックオフにもちゃんと寄る。均一本コーナーに村上龍とか辻村深月とかが揃っててびっくり。たまにくるとすごい。「いらっっ しゃいませ どうぞー!」と独特のイントネーションの店員さんも健在で安心する。

帰る前にもう一軒の古本屋さんへ。木と和室の香りに包まれた店内にやわらかいピアノ曲が流れているのが最高で、思わず何の曲か聞いてしまった。CDを見せてもらったけれど、洋盤なのでほとんど分からず。タイトルが多分「Circle」で、ブラジルで製作された、ということぐらいしか分からなかった。どなたかわかる方いらっしゃったら教えてください。

ここでは均一コーナーに安部公房がたくさんあってびっくり。『カンガルーノート』『死に急ぐ鯨たち』などを購入。後者はまだ新装版が出ていない貴重な評論集だ。来てよかった。

今日買った本。多分14冊。
もちろん一箱古本市用の在庫も含んでの冊数ではあるが、それにしても多い。最近の一ヶ月あたりの読書冊数が文芸誌+1〜2冊なので、どう考えても読むペースに対して買う量が多すぎる。そして来週ぐらいには買ったことを忘れている気がする。ソシャゲのアイテムに課金する、みたいな感覚で本を買ってしまうのは、やっぱり先の「心の穴」のせいだと思う。

帰りしに、行きに通った桜並木に立ち寄った。桜のいい香りに包まれた河川敷で、家族づれやカップルなど多くの人が写真を撮っていた。
花は少しだけ、心の穴を埋めてくれるような気がした。こういう休日が欲しかったのかもしれない。