別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

240427雑感

年間の交通事故の件数を考えれば、まあ一年に一度か二度くらいは事故を見ることはあるのかもしれないが、それがたまたま今日だった。交差点の真ん中にバンパーの凹んだ車が止まっていて、その前に一本だけコーンが置かれていた。事故発生からそんなに経過していなさそうだった。原付で右折レーンに入っていたので、現場のすぐ目の前を通過することになった。怖いなあ、気をつけなきゃなあ、と思った。

そんな印象的な場面から今年の連休は始まるのだった。と言っても、バイト先の小売店に連休も何もあったもんじゃないので、出休出出休出出出出出休という具合である。休みより出勤日の方が多い。それもこれも連休最終日の一箱古本市と、下旬の東京行のための休みを死守するためである。まあ、正直人の多い連休に出かけるのは嫌なので、別に困るというほどでもない。

いよいよ文學界五月号に着手した。次回の報告会までには余裕があるが、そんなことを言ってると来月号を読めなくなってしまうので、早めに読み終えたい。
新人賞とその選評を読んだので、それについて。

今回の新人賞受賞作二作は、どちらも「性」の話だなと思った。というか前回の「ハンチバック」と前々回の「N/A」も性に絡んでいる話だし、今の文學界は性問題を重視する傾向でもあるのだろうか?(あるいは選考委員の価値観なのか)
まず一作目の『私は無人島』は、堕胎をめぐる物語だった。望まない妊娠、中絶、堕胎。そういったキーワードからはリアルな社会問題のイメージが湧いてくるけれど、本作はそこに民話的なファンタジー感が持ち込まれていて、独特の世界観を形成している。主人公の友人が強姦され、中絶を望むが結婚相手の親族からは反対される。なぜならば、強姦犯は夫の弟であったからだ(闇!)。ただし条件として、伝説の堕胎師であるところの「えじう」から施術を受けるのであれば、中絶しても良いと言われている。そこで占い師の主人公が「えじう」を探す旅に出る、というストーリーである。
書いてて思ったけれど、この流れ、TRICKっぽい。突如舞い込んできた依頼で辺境の島へと飛び、怪しい老婆から謎の伝承を聞かされて……という。もちろん随所にネタが仕込まれたりとか組織と命懸けで戦うことになったりとかはしないんだけれど。しかしこの舞台が移り変わっていって読ませる感じの展開は好きだ。
そういうわかりやすい面白さも持ちつつ、作品として一番伝えたいところは主人公の変化なのだろうなと思う。幻想的な作品であるためその辺りは結構シンボリックに描かれていて、もう何度か読まないと自分の読解力では十分に拾いきれたとは言えないけれど。

二作目の『日曜日(付随する19枚のパルプ)』は、先入観を持たずに読んだ方がいいと思うので、内容についてはあまり触れない。弱者的な立場にいる(とされる)人が、必ずしも声を上げたいというわけではないよね、という話。若者同士の(じゃれあい的な、内輪ノリ的な)会話のリアリティが良かった。
副題にあるように、19の章から成り立っている作品だけれど、それぞれの時系列は意図的に組み替えられている。その意図については選評で答えっぽいことが言われてるけれど、やっぱりそれが答えかなーと思いつつも他に意図はないのだろうか? と考えてみる。

以上、文學界新人賞を読んだうっすい感想でした。選評を見れば分かるけれど、選考委員の皆様方はものすごく深い読みをしている。ああ、純文学ってこんなふうに読むんだ……という模範例みたいな。勉強になります。社会問題とか文学作品の構造とかについての造詣がないと、深い読みってできないんだなあと思う。
候補作は五作あって、その中で選ばれたのが二作なので後の三作は選評から想像するしかないのだが、金原ひとみさんの評は各作品のあらすじが簡潔にまとめられていて助かった。作品募集のコメントみたいなシンプルさ。

余裕があれば他の文芸誌の新人賞も漁ってみたいところだけれど(芥川候補が出てくるわけだし)、大変だろうなあ。面白そうだけど。
とりあえず来月は文チャレの群像担当さんのプレゼンを楽しみにしている。