別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

文芸誌を一年間読んでみるチャレンジ 4月の定例報告会

はい今月もやってきました、「文芸誌を一年間読んでみるチャレンジ」参加者各位による定期報告会でござんす。
果たして繁忙期の面々は膨大な文芸の海を渡り切ることができたのか…!?
その結果をしかとご高覧くださいませませ。


アクロバティックなチャレンジについてはこちら

himasogai.hateblo.jp


群像四月号・Sさん

  • 色々あってまだ半分でした
  • 毎年四月号には『震災後の世界』の特集があって、今回は古川日出男さんが書いている。『キカイダー石巻鳥島、福島』は「時間が飛ぶ感じ」がすごく魅力的
  • 古川さんはいつもニット帽をかぶっているけれど、脱いでいる写真がカッコいい
  • 柴崎友香さんと古川日出男さんの対談「書けないところから始まる」では、阪神大震災の話もされていて、大きな災害のあと何もかけなかったという話があったり、その時小説家はどういうことを考えていたのかなどが書かれていて興味深い
  • 鈴木涼美さんの新連載『不浄流しの少し前』が始まっている
  • 群像、執筆者が多すぎて最後の執筆者紹介が二行ぐらいで終わっている。高橋源一郎さんを「作家」とだけ書いてる紹介はなかなかない
  • 高橋源一郎さん『オオカミの』、第二回はあまり合わなかったけれど第三回は結構好き。おそらく元先生であろう人が主人公の女性と喋る中で、「コクバン」とか「 ハクボク」といった、今は失われてしまったものを語っている(時系列は未来の設定)。こういう雰囲気は結構好き。小川洋子さんの『沈黙博物館』とか村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』とか。ノスタルジックな、失われてしまったものが書かれているのが好き。この調子で行ってほしい
  • 動物たちが人間の代わりに働く世界になっているけれど、人間側はまだそれに慣れていない…という世界観
  • 松浦寿輝さん×沼野充義さん×田中純さん『「二〇世紀の夢」を読む30冊』で沼野さんが書いている「世界文学とは一定の名著のリストではない。それはひとえにあなたがそれをどう読むかにかかっている」、いいこと言うな〜
  • 松浦さんがJ・G・バラードを推している。全然読んだことないからちゃんと読も
  • 町田康さん×毬矢まりえさん、森山恵さん『「らせん訳」とは何か――時空を超えて木霊する言葉』は町田さんがぶっ飛ばしてて面白い。町田さん「自分で一回爆笑して、抜けるのが始まりですね」と書いているけれど、あまり笑顔のイメージがないので、自作に爆笑しながら書いてるのか、と想像すると面白い
  • 安藤礼二さん『空海』は、難しい。「世界を否定する哲学ではなく、世界を肯定する哲学を求めていた」とか、いいこと書かれてるけれど、難しい
  • 戸谷洋志さん『メタバース現象考 ここではないどこかへ』も今回で終わり。メタバースを希望的に使っていきたいということが最後に書かれていた
  • 工藤庸子さん「文学ノート・大江健三郎 Ⅲ 神話・歴史・伝承 『万延元年のフットボール』『同時代ゲーム』」、ムズい! まだ原著を読んでいないのと、工藤さん独特の体言止めが多い文章にまだ慣れず、難しく感じた
  • 工藤さん自身が大江文学に惚れ込んでいて、どうにかして現代の視線で大江を読み直そうとする取り組みであることはよくわかる
  • 堀江敏幸さん『二月のつぎに七月が』。大好きな堀江さんの連載が終わってしまった。後半も後半から読んだので展開はよく分からなかったけれど、セリフが地の文に入れ込まれているところや一文の長さは健在で、堀江さんっぽいなと思いながら読んだ。単行本化したら読み直したい
  • 井戸川射子さん『無形』は移人称で、すごく自然に視点人物が移っていくのが好き。セリフを書くのが上手くて、「ビールと合わないものなんか〜」というところは、これどっかで実際に聞いたんじゃないかと思えるぐらい
  • 町田康『口訳 太平記 ラブ&ピース 外道ジョンレノンを根絶せよ』はもう太平記なのかわからないけれど面白い。島田紳助の「ええやん」「素敵やん」とか出てきたり
  • 保坂和志さん『鉄の胡蝶は夢に記憶は歳月は彫るか』は保坂さんの今考えていることが同時的に書かれている、考えたことをそのまま書いてる感じが面白い。基本的に愚痴で、なんでタバコ吸ってる人にはみんな遠慮なく言えるんだ〜みたいな。宮崎駿養老孟司だけは今も喫煙シーンが放映されるというのは「確かに」と思った
  • 保坂さんの作品はエッセイっぽいけれど小説らしい。小説っぽいなと思うのは、京都のレコード屋・アローントコの店長さんがたまにツッコミで入ってくるところ
  • 今回エックハルトの『説教集』が取り上げられているけれど、よくよく見たら四行の中に「エックハルト」が4回も出てきていた
  • 青松輝さんのエッセイ『u』は見開き2ページでとても面白い。人気な理由がわかる

ユリイカ/現代詩手帖/飛ぶ教室・Jさん

  • ユリイカクレイジーキャッツからの柴田聡子、山田太一と振り幅がすごい
  • 掘り下げ方はすごく面白い。本人が出てきたり、大森靖子とか岸田繫とかいろんな方がアンケート答えてたり。柴田聡子を知り尽くして読んだら絶対面白いんだろうなあと思う
  • クレイジーキャッツの号の編集後記を読んだら面白かった
  • ユリイカは詩の投稿があって、好きな詩人の井坂洋子が選者になっている。出すのはタダだから、出してみるのもありかな
  • 現代詩手帖は読み込みすぎると、自分の中に入ってきちゃって無意識で盗作してしまうんじゃないかと思ってあまり読み込めないけれど、ちょいちょい見て「あ、これは素敵」という感じで読んでいる
  • 飛ぶ教室には結構好きな少年アヤさんが書いていた。アヤさんは「ょゅぅゃ」というおもちゃ屋さんをやっていて、いつか買い物に行きたい。
  • 人がぬいぐるみを選ぶ時、みんな自分に似たものを選んでいくという話を書かれていた。あまりぬいぐるみを買わないけれど、家にあるぬいぐるみを見て「似てるのか〜」と思いを馳せたり
  • 「捨てられない物」という特集の中で藤原麻里菜さんが、いいことがあると石や木の棒を持ち帰ると書いていて、そういう集め方いいなぁと思った

群像3月号/文學界4月号・うち

  • 群像は話題の『バリ山行』を読んだ
  • 前回Sさんがおっしゃった通り、全体の構成、流れがすごく考えられた小説だと思った。主人公が初めてバリ登山を体験して楽しい!と思ったらそれはバリのなかでもメジャールートで、折り返しの道なき道を進むハードな下山に気が滅入ってしまう。そんな気分の動きと仕事の浮き沈みが絡み合っていって、不穏な状況に陥ってしまう。ただ最後に少しだけ希望が見られてよかった。自分はそんなに登山経験がないのでちょっとした岩場とか傾斜や狭い道でも生きるか死ぬかぐらいの気分になっちゃうけど、バリは比べ物にならないんだろうな。
  • 文學界筒井康隆御大の『自伝』が始まっている。めっちゃ細い。こんな幼少期の記憶がはっきりあるのがすごい
  • 町田康さん『弥勒の世』は完全に風邪引いた時に見る夢。ヤバいガマを処分するバイトとか、何もしてくれない先輩とか、この不条理さ
  • 長嶋有さん『ゴーイースト』、滝口悠生さん『煙』はどちらもロードムービー的な作品。移動の中で交わされる会話とか、主人公の思考とか。どちらも開放感がある
  • 井戸川射子さん『並ぶ連なり歩み』では、すごい独特な仮装行列が登場する。「犬持ち」「花飾り」「苔貼り」などなど。そんな行列が野山を練り歩いていく様はブレーメン的なお伽話感があるのだけれど、話している内容はめちゃくちゃ日常的な仕事のこととか悩みとかで、不思議。タイトルとか「皆ザイフ」とか、独特の語感が好き
  • 第54回 九州芸術祭文学賞発表、選評がけっこう厳しめで怖い。。
  • ビブリオ・オープンダイアローグ、今回は石田月美さん演じるヴォネガット依頼人役。ヴォネガットを読んでないのでこんな感じなのかわからないけれど、めちゃくちゃ役に入っているのがすごい(まさに悲劇をユーモアに転じている感じ)
  • 今回津村さんからのエッセイ3本が非常に面白かった。新幹線に「ピルペロ」(読んでいると絶対アレやろ!とわかる)を忘れてしまった話に、のど自慢の公開収録体験記(めしの割合がどんどん減っている?)、フランベ初体験の話(焚き火の代わりにはならんやろ)。ツッコミどころが多い
  • 新人小説月評では『バリ山行』も取り上げられており、理解度が上がるとともに自分の浅すぎる読みを反省
  • 宮崎智之さんの文章も、作品の内容に触れながら自分の言いたいことと繋げて組み立てているのが、すごく構成された文章って感じで美しい
  • 五月号はいよいよ新人賞なので楽しみ


次回の文チャレ定期報告会は

五月の報告会は「本の会」内で行う予定です。単発参加で群像やユリイカを読んでくれる方がいるので、より多くの方と感想を共有できるのが楽しみ。
日程が決まり次第、どこかしらで発表します。