別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

文フリへ行ってきたんだ日記

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これは今日のお昼に食べたすき家のキムチ牛丼(を食べ終わった後)である。大阪の船場。午後2時半。晴れているのにポツポツ大粒の雨が降っていた。こんな中途半端な写真しか残っていないのは、初めて行った文学フリマで歩き回って疲れたからだ。

 

 

文学フリマ。その名を知ったのは果たしていつのことだったか……などと勿体ぶって回想するほどでもないぐらい最近だったと思う。イラストレーターさんや漫画家さんをフォローしているとコミケの話は流れてくるものの、文フリに関しては全く知らなかった。というか正直偏見もいいところなのだが、一般の人がつくるオリジナル作品のクオリティにそれほど期待をしていなかった。そういう考えを改めることになったきっかけは、読書会や書店などで素敵なZINEに出会ったことだった。そうして作り手の人たちとの距離が色々と縮まった以上、一度は文フリに行ってみなければ……と思っていたわけだ。

 

実際に会場をぐるっと回ってみて、想像以上に作品のクオリティは高かった。デザイン・製本などにこだわりを感じられるものが多く、作り手の気合いをひしひしと感じられる空間だった。しかしそのあまりの多さに若干めまいもしてしまう。事前情報を一切仕入れずに行ったので、自分が読みたい本がどこにあるのかが分からない。しかも文学だから、一つ一つをじっくり読んでいくのも難しい。

結果的に、ほぼ直感で欲しい作品を選ぶことになった。手触り、大きさ、表紙、文字組。そして一番大切なのは、書き出し。ここが合わないとたぶんずっと合わない。

今回冒頭に最も引き込まれた笹舟さんの『薄明薄暮性』という詩歌集の書き出しは次のようなものだった。

 

どこにもいなくなるために、誰よりも早く朝にたどりつく。

 

直感で選んだ本は大体そのとき必要な本である。それは自分がその本に合わせていくということかもしれないし、その本を自分に合わせていくということなのかもしれない。どちらにせよ、今が一番読み時だということ。戦利品をパラパラめくりながら、帰りの電車に揺られていた。

 

 

即売会には独特のコミュニケーションがある。

「よかったら見本をどうぞ」

「これが新刊で、こういうテーマで……」

ブースに座っているのはほぼその本の作り手。手に取ってもらいたいという気持ちも殊更強いだろうし、何も声かけをしないとあの喧騒の中では埋もれてしまう。だから前を通る人には積極的に声掛けをしていく。

ただ私は周知の通り一般コミュ障であり、声をかけられると色々焦ってお辞儀でスルーしてしまう。いや、もちろんどうしても読みたいときには「失礼シマス……」と小声で呟き見本誌を手に取るものの、それ以外のブースの前を通り抜けるのが一苦労である。「ごめんなさい!」と思いながらスルーするたび何かが削られていくような感じ。慣れたら何も感じなくなるのだろうか。それはそれでちょっと嫌だけど……。

個人的に一番気が楽なのは、「よければフリペをどうぞ」と手渡ししてもらうことだった。作り手も配りたくて(そして興味を持ってもらいたくて)フリペを配る。客も面白い本を見つけるきっかけとしてフリペをもらう。結局作品を買わなくても、何かを受け取ったというだけちょっと気が楽……みたいな。しかし自ら配っていくスタイルだと相当な数のペーパーが必要なはずで、やっぱり作り手さんはすごい。

逆に一番苦手なのは「小説書かれてるんですか?」的なコミュニケーションである。もちろん文フリに来ている中には創作者も多いのだろうが、そうでない自分としては「あっ……いえ」と微妙な空気になってしまうのがちょっと嫌だ。ただ単に自分の卑屈さのせいなんだけど。

 

あとはブース作りとして、敷き布の丈夫さとか、ディスプレイを高めにしてあまりお客さんをジロジロみないようにしてるとか、取った見本を戻しやすいような置き方にしているとか、見本はカバー付きでわかりやすくしてるとか。一箱古本とかでも色々参考になりそうで勉強になった。手に取ってもらうには細かいところのホスピタリティ的な部分もかなり大切なんだなあ。

 

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文フリ会場を後にして、天満橋から本町のtoi booksまで歩いた。大阪によくある、ビルの上階におしゃれなブティックとか色々な店が入った建物だった。

入っていきなり本屋本の棚があって、攻めてるなあと思った。好き。

 『美しい本屋さんの間取り』(エクスナレッジ/2022)によると5坪しかないらしいが、その狭さを感じさせないぐらいの充実感だった。海外文学系が意外と多い? そして独特な古本の文脈棚。「それぞれの暮らし」や「夜に寄り添う」などのテーマで並んだ本は不思議と印象に残るし、店側の目線としては程よく分散できていいのかなと思った(古本をジャンルで分けるとどうしても偏りが出てしまいそう)。

文フリで売ってたおそらくかなり新しめの本も並んでいて、やはり感度の高さみたいなのは大切だなあと思う。

 

そこからさらに心斎橋→道頓堀→難波と人に揉まれながら歩いて写真ギャラリーやブックオフを梯子してめっちゃ疲れたので、今日はもう寝ます。

 

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正直人混みは嫌いだけれど、この辺をぶらついたおかげで万城目学さんの『みをつくし戦隊メトレンジャー 完全版』をより楽しめたのでよかった。

 

あと、文フリの見本誌って全部日大藝術学部の資料室に収蔵されるんですね。今までの出品作全部あるの? めっちゃ見てみたい。。