別に書くほどじゃないけど…

ツイート以上、フリペ未満の雑文帖

ユートピアの方へ(2)

ユートピアとしての本屋』の著者であり、幕張の「本屋lighthouse」店主・関口竜平さんをゲストに招いたトークショーが開催されるということで参加してきました。


会場の「HIBIUTA & COMOPANY」もまた違いある人の共有地を目指すブックカフェ。

とても実りある時間だったためイベントの詳細はオンラインアーカイブの方をご視聴いただくか、来年に出る文字起こし+参加ゲストによるエッセイ本を参照していただきたいところであるが、ここでは個人的にすごく腑に落ちた、良かったと思う部分を簡単にメモしておきたいと思う。
アーカイブ視聴リンク(有料)


本屋は週1日開いていればいい

広さの限られる個人書店では、お客さんの動きがよく見えるらしい。「この人は買わなさそう」「この人はもう一周したら買いそう」などなど。
そして、本を買うお客さん——わざわざ本屋を目指してきてくれるお客さんは、本屋が開いている日が少なくとも、その日に来てくれる。故に本屋は極論週1日の営業でも良いというような話には、とても納得した。確かに、毎日開けてても売り上げが上がるとは限らない。それでも毎日開けざるを得ないのは「家賃」と「人件費」があるからで、仮にそれらがかからない本屋であれば週二日でも十分成立す流というような話だった(実際lighthouseさんはかつて畑の小屋で営業されていた)。これは自分自身、わざわざ個人書店の開店日に休みを合わせたりすることがあるのでけっこう実感できる。個人書店慣れしてる人は「営業日が少ない」ことはもはや前提だと思ってるかもしれない。
しかしそれでは収入が心配だという声もあるかもしれないが、関口さん曰く、「収入源は本以外にあった方がいい」とのことである。なぜならば、本だけで商売を成り立たせようとすればどうしても「売れ筋」を増やしたり、本心でない部分をかなり妥協しなければならなくなる。そうなると、「ユートピアを目指す」という理想とはかけ離れていってしまうからだ。実際チェーン店の平台に並ぶのは目を引く誇張気味のタイトルだったり派手な雑誌だったりして、独立系書店にそんな光景が広がってるのはちょっと嫌だ。少なくとも今の業界構造の中でならば、本にこだわりすぎない方が持続的で理想の本屋を続けていけるというのは事実そうなのだろう。

本ってそんなに読まれるものじゃないよね

関口さん自身が高校生の頃まではサッカー少年であり、本をそれほど読まなかったということは著書にも書かれていた。しかしそれをデメリットと捉えるのではなく、むしろ世間ではそっちの方が普通と捉えている、というようなお話をされていた。そのような視点を持つことは結果的に、「本を読まない」「読みたいとは思っているけれどちょっと苦手」といった層の人々に対しても開かれたお店づくりにつながるという。
考えてみれば自分も初めて独立系書店に入るときはけっこう緊張していたと思う。いや、今でも初めての小さな本屋さんではけっこう緊張する。だがチェーン店になると、そういう緊張感は全く感じない。それはやはり、より多くの人を受け入れるキャパシティ(空間的な意味でも、商品の広さ的な意味でも)があるからだろう。
もちろん先に書いた通り、漫画や付録付き雑誌ばかりが並ぶ独立系書店はちょっと「それじゃない」と思う。だが、本屋がなるべく幅広い人に開かれている(つまり、「本好き」以外を排除しない本屋である)ことは、より「ユートピア」に近いと言えるのではないだろうか。

そしてこの話を聞いた時、自分の中で「もっと本を好きにならなければならない」「本を読まなければならない」という半ば呪いになりかけていた強迫観念が、ふっと解けていくような感じがした。
本好きの人々と関わり、読書会などに顔を出すようになってからずっと感じていた、本に対するプレッシャー。でも、実際のところ読書は娯楽なのである。
本屋として働き、本を出版もされている方が、「本を読まない人」の側にも寄り添ってくれている(だから売り上げが少ない日でもそれほど落ち込まないらしい)ことは、自分の心をすごく軽くしてくれた。


所々ユーモアも挟みつつの関口さんの話を聞いていると、とても知的な方なのだろうなと感じられる。


ここで取り上げた以外にも、「チェーン店で働いたからこそ今に活かせている経験」「ヘイト本を置かない宣言からヘイト本を置かないことを目指す宣言への移行について」「lighthouse・散策舎・日々詩書肆室でもっとも売れている本」「小屋で営業していて良かったこと」などなど、興味深いお話をたくさん伺えた。アーカイブや記録本を参照されたし。


関口さんのユーモア溢れる文章は最新の書評・日記本や
https://books-lighthouse.com/publishing/bookstore-witness-you-vol-1/

noteなど
https://note.com/books_lighthouse/n/nc89d7ccedb5e

でも読めるので、ぜひ。(回し者じゃないよ)

そして、lighthouseさんの反差別・反ヘイトの方針はときわ書房さんでの経験からも影響を受けているというような話があったので、もう一度こちらの本も読み返したい。

https://lighthouse24.thebase.in/items/74988052


あと僕マリさんと「違国日記」はそろそろ読まねば。読もう。